Mr.Children『Kind of Love』レビュー
Mr.Children 『Kind of Love』
データ
1992年12月1日発売
最高13位
累計売上1,179,780枚
登場159週
作品概要
前作『EVERYTHING』から約7ヶ月ぶりというスパンでリリースされた2ndアルバム。
新宿ヒルトンホテルのスイートルーム2部屋を10日間も借し切り、シンセサイザー・Macintosh Quadraを持ち込み、当時最先端だったハードディスク・レコーディングを小林武史・桜井和寿の2人のみで行った。ギターやベースはアンプを通さず直接コンピュータに繋いで録音し、ドラムだけは別途スタジオで録音した。まず桜井と小林が2人で曲の構成を練り上げ、出来上がった曲をメンバーに渡すと再び部屋にこもるのを繰り返した後、後からバンドが参加するという流れでレコーディングが行われた。そのため作詞や作曲のクレジットに小林が入っているものが多くなっている。 小林のコンセプトは「少年時代にクラシックピアノの先生に習ったコード進行や旋律にアレンジすることで、人間の様々な感情を表現できて、その時に味わった宇宙感を桜井にも味わせたい」という願望があった。
前作のアルバムタイトルが「何よりも大切なもの」という意味だったことから、Mr.Childrenにとって大切なものは「愛」ではないかという理由で「Love」が浮かんだが、当時の彼らには少し重い言葉だったため「愛のようなもの」(色々な愛)を意味する同タイトルに決まった。
初回限定盤は三方背スリーブケースに、CDトレイはスリムケース仕様の別ジャケット、大型歌詞カードが収められており、現在は入手困難。
収録曲
①虹の彼方へ
②All by myself
③BLUE
④抱きしめたい
⑤グッバイ・マイ・グルーミーデイズ
⑥Distance
⑦車の中でかくれてキスをしよう
⑧思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜
⑨星になれたら
⑩ティーンエイジ・ドリーム(I〜II)
⑪いつの日にか二人で
※④2ndシングル
総評
デビューアルバムと同年にリリースされた、2ndアルバム。曲作りは桜井と小林の2人だけで行うという、桜井のソロアルバムのような体制で制作された。
イントロからして爽やかなポップソング①で幕を開けるが、その後はアルバムタイトルの通り様々なシチュエーションによるラブソングが並ぶ。今なおファン人気の高いラブバラード④、彼らのアマチュア時代から存在する⑦、寺岡呼人との共作で作られた⑨などは、間違いなく名曲。他にも、スイートソウル風なナンバー③やドラム・鈴木がボーカルを務めた牧歌的ラブソング⑧など、バラエティに富んだ楽曲が続く。
売り上げも『CROSS ROAD』でのブレイク後にジワジワと伸ばし、ミリオンを突破している。「初期の傑作」というキャッチコピーが相応しい、名盤である。
評価
★★★★★★★☆☆☆(7点/10点中)
Mr.Children 『EVERYTHING』レビュー
Mr.Children 『EVERYTHING』
データ
1992年5月10日発売
最高25位
累計売上451,440枚
登場83週
作品概要
Mr.Childrenの記念すべきメジャーデビュー作品。「ミニアルバム」と「フルアルバム」は区別されることが多いがMr.Childrenは公式にミニアルバムである本作を1stアルバムと位置付けている。
1991年の後半に音楽プロデューサー・小林武史と初対面し、同年12月からサウンドスカイ・スタジオとスターシップ・スタジオにてレコーディングを開始。タイトル「EVERYTHING」は何より大切なものといった意味で、「本作を聞いた人の大切な1枚になって欲しい」という桜井の想いが込められている。
全曲アマチュア時代からのライブレパートリーで、本作へ収録するにあたり小林がストリングスなどのアレンジを加えた他アドバイスによって桜井は歌詞を一部変更した。また、予算の関係か本作は生のストリングスが一切使われていない。当時は無名だったこともあり最高順位は25位とあまり高くなかったが、ブレイク後に売り上げを大きく伸ばし最終的に40万枚以上の売上を記録している。
収録曲
①ロード・アイ・ミス・ユー
②Mr. Shining Moon
④風~The wind knows how I feel~
⑤ためいきの日曜日
⑥友達のままで
⑦CHILDREN’S WORLD
※③後に1st シングルとシングルカット
総評
Mr.Childrenの歴史の始まりを告げるデビュー作である。と言っても、「ファースト・アルバムにして名盤」といった趣とは程遠く、初めてミスチルを聴くリスナーには本作から手を出すことはあまりおススメしない。ちなみに、後の大ヒットソング『Everything(It's you)』とタイトルを混同しがちだが、大文字表記の場合が今作、と覚えておくと良いかも。
一般的に知名度のある収録曲は後にシングル・カットされベスト盤にも収録された③以外は少なく、彼らのライブでも演奏される機会はほとんどない。2015年のスタジアム・ツアー『Mr.Children Stadium Tour 2015 未完』で⑦が披露された際はファンの間で大きな話題となった程だ。
ただ、決してクオリティが低いなんてことは決してなく、恋の終わりを切なく憐れむ①、胸の詰まるような片想いを歌う②⑤、バンド名の通り少年の心を描いたような爽やかなポップソング④⑦など、しっかりと聴けば聴くほど良曲揃いだと気づかされる作品集。
評価