Mr.Children『Atomic Heart』レビュー
Mr.Children 『Atomic Heart』
データ
1994年9月1日発売
累計売上3,429,650枚
登場96週
作品概要
前作『Versus』から1年ぶりのアルバム。発売時は邦楽アルバム歴代最高売上を記録し、自身の最大のヒットアルバムとなっている。小林武史は、本作から方向性が恋愛路線から精神論へと変化してきたことを指摘している。
ジャケットはブルーバックに白文字で「Mr.Children・Atomic Heart」と小さく表記されているのみ。初回限定盤はブルーのプラスチックスリーブに水色のカラーCDケースが収納されている仕様であり、歌詞カードの表紙は表記のない水色の無地。初めてインストゥルメンタルが収録された作品で、本作以降Mr.Childrenの全作品で公式にインストゥルメンタルは斜体文字で表記されている。Mr.Childrenのアルバムでは最もシングルカットされた曲(カップリング曲やリミックスバージョンを含む)とベストアルバムに収録された曲が多い作品でもある。
収録曲
①Printing
②Dance Dance Dance
③ラヴ コネクション
④innocent world
⑤クラスメイト
⑦ジェラシー
⑧Asia (エイジア)
⑨Rain
⑩雨のち晴れ
⑪Round About ~孤独の肖像~
⑫Over
※④5thシングル、⑥4thシングル
総評
1stから3rdまでの「爽やかな渋谷系ポップバンド」路線から完全に脱却し、Mr.Childrenを国民的モンスターバンドへ押し上げた4th。収録曲数こそインストゥルメンタル2曲を除くと前作と変わらない10曲であるが、その楽曲の幅広さこそこのアルバムの肝であろう。
具体的には、まずお茶の間まで浸透しMr.Childrenの名を世に知らしめた大ヒットシングル④⑥、デビューからライブの舞台としていたライブハウスやホールを超え、より大きなステージ(武道館、ドーム、スタジアム...)での演奏を目論んだキラーチューン②③⑪、これまでの路線を受け継ぐポップソング⑤⑫、そしてサウンドやアレンジ含め明らかに実験作の試みとして作られたであろう⑦⑧⑩...といった具合だ。
本アルバム制作の様子は書籍『【es】 Mr.Children in 370 DAYS』に生々しく記されているが、小林を含めた彼ら自身が「『CROSS ROAD』『innocent world』を当てたグループ」だけでは終わりたくなかったからこそ、所謂「売れ線」の楽曲ばかり並んだアルバムにしたくなかったのだろう。
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『Atomic Heart』というタイトルは、初期から桜井が描いてきたセンチメンタルな青春の恋愛、そして大ブレイクにより当時のバンドを取り巻いていた熱狂的なムードまでも客観的に分析しているかのような、どこか無機質で哲学的な雰囲気を象徴しているのではないだろうか。
評価
★★★★★★★★★☆(9点/10点中)