Mr.Children 『BOLERO』レビュー
Mr.Children 『BOLERO』
データ
1997年3月5日発売
累計売上3,283,270枚
登場36週
作品概要
前作『深海』から約8ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム。前作のアナログ・サウンドとは対照的に今作ではデジタル・サウンドを意識して制作され、10日間ほどロンドンに滞在し、レコーディングが行われた。
前作に収録されたシングル曲が10thシングル「名もなき詩」、11thシングル「花 -Mémento-Mori-」の2曲のみで(ただし「マシンガンをぶっ放せ」は後に12thシングル「マシンガンをぶっ放せ -Mr.Children Bootleg-」としてシングルカットされた)、4thアルバム『Atomic Heart』以降に発売されたシングル曲はアルバム未収録となっていた。そのため、本作には6thシングル「Tomorrow never knows」、7thシングル「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」、8thシングル「【es】 〜Theme of es〜」、9thシングル「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」、13thシングル「Everything (It's you)」の5曲が余さず収録された。本作は12曲中8曲でミュージック・ビデオも製作されており、自身のアルバムで最も多い数となっている。
発売前に一部雑誌には「青盤(『深海』)」と「赤盤(『BOLERO』)」による2枚組という情報が流れた経緯もあり、『深海』と同時期に制作されていたが同作のテーマにはそぐわないという理由で収録しなかった曲もあるため、対になっている面がある。当時の雑誌インタビューで桜井は「(『深海』と『BOLERO』は)3Dメガネの青と赤のようなもの。両方揃って初めて立体に見える」と述べた。大ヒットしたシングル曲が多く、これらが収録されたのは「ファンへの感謝の気持ち」とのこと。一方、プロデューサーの小林は「(ベスト盤的な要素のある)このアルバムは、いいものなのかどうか解らない…」と評価を濁している。
ジャケットは異国の少女が1人、一面に咲き広がる向日葵の中でボレロの代名詞でもあるスネアを叩いている写真でメンバー以外の人物がジャケットに起用されたのは本作が初。
収録曲
①prologue
②Everything(It's you)
③タイムマシーンに乗って
④Brand new my lover
⑤【es】~Theme of es~
⑥シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
⑦傘の下の君に告ぐ
⑧ALIVE
⑨幸せのカテゴリー
⑩everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-
⑪ボレロ
⑫Tomorrow never knows (remix)
※②13thシングル、⑤8thシングル、⑥9thシングル、⑩7thシングル、⑫6thシングル
総評
活動休止前にリリースされた6thアルバム。「ミスチル現象」期にリリースされた⑫⑩⑤⑥を含むミリオンヒットシングルを5曲収録していることもあり、総売り上げは『深海』を大きく超えるセールスを記録している一方で、その豪華な内容故に「単なるベスト・アルバム(に近い)」アルバムでしかない、と揶揄されることも多い作品である。実際、桜井や小林は今作をあまり気に入っていない様である。ただ、個人的には今作のアルバム曲は唯一無二の名曲の宝庫であり、ここにこそこのアルバムの価値があると思っている。
資本主義社会への皮肉を歌った③⑦、当時の桜井の私生活の状況が余りに生々しく聴こえてくる④⑨、そして「どんなに絶望的な状況でも生きている限り光(=希望)はある」と歌う⑧は、今作の核とも言うべきハイライトであろう。
あの有名クラシックをサンプリングしたアルバム・タイトル曲「ボレロ」のマーチでクライマックスを迎え、最後にリミックス・バージョンの⑫が収録されているが、このアルバムのリリースを境に活動休止するバンドの歴史を振り返ると、単なるボーナス・トラックではなく、大団円として聴こえてくる。
評価
★★★★★★★★☆☆(8点/10点中)